この記事は、
- 今後の就職活動を控え、活動を少しでも有利に進めたいという学生
- 転職に備え、今後の活動方針を前もって見極めておきたい社会人
のために、今の日本の雇用情勢について大まかに理解し、今後の就職活動・転職活動を少しでも有利に進めるためのガイダンス的なページとなっています。
あなたが現在、就職もしくは転職活動中であれば必ず知るべきこと、それは足元の雇用情勢であり、それを知った上でこれからの就職対策に活かすことが重要となります。
なぜなら、就職・転職活動はその時の経済情勢に大きく左右されるからです。
過去にはバブル崩壊後の景気低迷による買い手市場で、就職内定がなかなかもらえなかった就職氷河期世代が存在します。
就職活動というものは、ある程度「運」という要素が入ってきます。これだけは致し方ありません。
そして、近年も就職活動における新たな構造的変化の時代が到来しようとしています。
それは、近年大きなニュースとして取り上げられている、「新卒一括採用の廃止・通年採用への移行」についてです。
マクロな見方をすると、これは現在の日本の大きな雇用問題となっている「終身雇用」の崩壊と密接に関わっています。
この記事では、このニュースについて深く掘り下げていきます。
日本の「終身雇用制度」が世界で戦う上での阻害要因に
記憶にも新しい、経団連会長による「終身雇用を続けるのは難しい」という発言。
これは、日本の経済界が「今のような日本型の雇用制度がこれからも続くと、欧米にあるような大企業との競争で戦っていくことが難しいですよ。」と日本政府に圧力をかけているのです。
日本型の終身雇用制度とは「若い頃に働いて給料が少なく、年齢を重ねるに従って働き振りに対する給料割合が高くなる」という制度です。
この制度は今までの日本人のライフスタイルに非常にマッチした制度でした。
若い頃は少ない給料で頑張って働いてもらい、結婚・出産・子育てと生活コストが掛かる中高年齢となるに従い、仕事内容に関わらず給料を増額していきましょうという内容でした。
ただし、会社としては、高齢化して仕事能力や生産性が低くなる社員ほど給料を上げなければいけないという構造が「終身雇用制度」そのものだったのです。
しかし、この制度が有効に機能するのは、日本経済が右肩上がりの成長を続けていることが前提です。
近年の欧米、新興国の経済発展に伴って、日本の製造業を中心とした産業の世界市場での競争力は著しく衰えてきています。
その上、日本の人口減少もその問題に大きく拍車をかけてきているのです。
その結果、日本の上場企業を中心に「今の終身雇用制度を維持したままでは、世界市場では戦えない」という危機感が現れているのです。
すなわち、すでに日本経済は終身雇用制度の「金属疲労」を迎えているのです。
日本の企業は、使えない人を少しでも多く切って人件費をカットして、有能な人たちだけで世界市場で戦わせたいと思っています。
日本経済と政府の間での軋轢
ところが、日本政府は人口減少による「年金制度崩壊」に対して危機感をあらわにしていて、少しでも多くの企業に従業員を雇い入れてもらって保険料を払ってもらい、年金制度を維持したいと考えています。
その代表的なものが日本政府による「70歳定年延長」のニュースです。
つまり、過去には「60歳定年でそれ以降は年金を払っていきますよ」という制度であったのが、現在はそれが65歳まで引き上げられ、今後は70歳まで引き上げて年金の支払額を少しでも減らし、制度を維持していきたいという思いがあるのです。
また、「老後資金として少なくとも2,000万円は追加で必要ですよ。」ということを国が口走ってしまったニュースも記憶に新しいですよね。
つまりは、「日本はこのまま行くと本当に年金が支払えない大変な事態になる」と国は分かっているので、国民に公になる前に企業と交渉して多くの人々を採用してもらい、働かせて少しでも多くの保険料を支払ってもらうように必死になっているのです。
そうなると、割りを食うのが日本の企業です。
上にあるように、日本企業は世界で互角に戦うためには、少数精鋭部隊で勝ち残っていきたいと考えています。
それに対し、日本政府は戦力の乏しい高齢化した従業員も引き続き採用して欲しいと言ってきます。
ここで日本企業は双方の板挟みにあっているのです。
そこで、日本企業としては政府の頼みを引き受けてあげる代わりに、終身雇用制度を廃止させてくれと言っているのです。
つまり日本企業は、
「70歳になるまで従業員を引き受けられるように頑張っていきます。なので、従業員を一度採用したら解雇するのが難しい今の法律を変えてもらえませんか。これからは、年齢にかかわらず柔軟に人を採用したり解雇したりできるようにしたいです。そうしないと世界で戦っていけません。」
と条件をつけて法律を変えてもらうよう、政府に懇願しているのです。
その代表的な発言が「終身雇用を続けるのは難しい」という発言につながっています。
これからの働き方について
それでは、これからの私たちの働き方は一体どういう風に変わっていくのでしょうか?
第一弾:働き方改革(2018年実施)
今の現役サラリーマンは、国が決めた働き方改革の法律に従って、残業を削減したり、有給休暇をきっちり取るように指導されている最中です。
最近になって、ようやくこの改革が浸透しつつあります。
なので、今まで奴隷のように働かされていた日本の労働環境はかなり改善されつつあります。これは皆さんにとって朗報といえるでしょう。
第二弾:同一労働同一賃金制度(2020年実施)
この制度の威力は相当デカイです。
成果主義社会に向けた外堀を埋めるための制度で、ここで終身雇用が完全崩壊する可能性があります。
同じ職場で同じ仕事をする正規雇用の従業員と非正規雇用の従業員の待遇や賃金格差をなくしましょうという制度
つまり、働き方改革で残業を減らしたり、有給休暇を取りやすい環境も整えた。でも蓋を開けると売上がよろしくない。これって本質的な働き方改革ができてないんじゃね?
ということで、本質的な働き方改革とは
- 従業員満足度の向上
- 離職率の低下・採用の強化
- 従業員一人当たりの労働生産性の向上
なのです。そして、これを実現しようとする制度が同一労働同一賃金制度なのです。
要は、終身雇用のような年齢給ではなく完全にフラット、仕事に見合った給料体系へ変えていきましょう。そして、従業員が不公平とならないようにして満足度を高めていきましょう。
で、最終的には企業も頑張った人に報いられて、仕事の生産性もアップするという良いことづくしの制度なのです。めでたしめでたし。
とはいかないんですね。
なぜなら、この制度は「今、働いている正社員(特に働き振りに対する給料割合が高い高年齢正社員)には圧倒的に不利」な制度なんです。
例えば、同じ内容の仕事をする正社員とパート・派遣社員がいるとしましょう。
今までであれば、正社員の方が待遇も給料もよかったですよね。でも、この制度が施行されると、「同じ」給料となるわけです。そうすると自ずと正社員の給料が今までよりも下がってしまうわけです。
この制度ができた背景には、2003年に小泉政権&竹中平蔵大臣による労働者派遣法の変更で、非正規労働者を大幅に増やしてしまったという過去の失政を是正しようという意図があります。
また、冒頭に出てきた就職氷河期世代、いわゆるロストジェネレーション世代を救済しようという意図もあるんじゃないかと思っております。
そして、所得の格差をなくして、少しでも多くの国民から年金保険料を支払わせようという意図が見え隠れします。
ただ、いずれにしても、この制度は欧米のジョブ型雇用に近づけていることは間違いありません。
第三弾:簡単に雇用・解雇ができる欧米ジョブ型雇用へ移行
そして、この次は遂に金銭で従業員を解雇しやすくする制度(金銭解雇制度)が登場するのではないかと個人的に思っております。
日本企業が希望する形がやっと実現するということになります。
ここまでくると、完全に欧米と同じ雇用形態になるのでしょうね。
つまり、終身雇用の「完全な消滅」です。
近い将来、我々の生活が劇的に変わる可能性があります。
では、これから就職活動・転職活動をしようとする人にはどのような影響が出てくるのでしょうか?
次の記事でそれを明らかにしていきたいと思います。
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